1972年の秋に読んだ乱歩「パノラマ島奇談」原作のマンガは高階良子の「血とばらの悪魔」だった

漫棚通信ブログ版」さんが、丸尾末広が江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」を漫画化したものを紹介されている。「丸尾ミーツ乱歩『パノラマ島綺譚』」、その記事を読んで、そーいや少女マンガで「パノラマ島奇談」をマンガにしたものを読んだなあと思い出した。1972年の秋のこと、最終回が載っていた雑誌、乱歩を読み始める直前のことで、最初は乱歩原作と気づかなかった。面白そうだなーと読んでいるうちに、原作が明記されていたからだろうけど、分かった。最後の花火の場面、そして、その前の方の号だったかも知れないが、海底トンネルもあったと思う。以前書いた、ラジオのニッポン放送のドラマ「パノラマ島奇談」が、ちょうど放送されてた頃だ。


ネットで検索してみたら、こちらで紹介されていた。「セサミのお庭」、「なかよし時代」。そうだ、題名は「血とばらの悪魔」、そうだった、そうだった。作者は高階良子だったのだね(この他の作品は知らないが、名前は見かける)。

さらに調べると、文庫化された本が、ブログ「飾釦」さんの記事「
漫画no乱歩#2⇒「血とばらの悪魔」by高階良子
」で紹介されていた。講談社から 1999年に出たようだが、今は品切れのようだ。

その 1972年頃、妹が“りぼん”をよく買っていたので、この「血とばらの悪魔」も、てっきり“りぼん”に載ってたものと思い込んでいたが、講談社から出てる? さらに検索してみると「桜の栞」さん、「『血とばらの悪魔』 高階良子 原作:江戸川乱歩」、〈1971年『なかよし』11月号から連載を開始した『血とばらの悪魔』は、〉とある。“なかよし”だったのだ。

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乱歩「堀越捜査一課長殿」を再読 + NHK「明智探偵事務所」

「日本探偵小説全集」の乱歩編の内容」、収録されている短編「堀越捜査一課長殿」を再読した。この短編は、講談社の全集で大人になってから読んだ。戦後の乱歩は、戦前にエログロな変格探偵小説を書いたことを反省して、海外ミステリの普及に努めた。自分で書く作品も、戦前とは違う、すっきりした作品を書いた。とはいえ、『影男』みたいな、戦後の東京を舞台にして戦前の通俗長編を再現したような長編も書いてはいる。「堀越捜査一課長殿」は昭和30年頃、還暦を迎える頃の作品で、“オール読物”掲載だったかな。今読み返してみると、乱歩が自ら言う変身願望が通俗長編の怪人や少年物の怪人二十面相を生んだわけだが、戦後のリアルな白昼の光の中で、その変装変身の可能性を追求してみたというような作品になっている。銀行強盗の話だ。ちなみに三億円事件が起こったのは、乱歩の死後、2年ほどしてだった。

常にメディアで取り上げられる乱歩作品、私が子どもの頃、大阪万博の年には、今ではとうてい放映出来ない東京12チャンネルのエログロ明智小五郎シリーズが子どもの私を夢中にした(笑)。続いては 1972年の春から半年、NHK、大阪製作だったと思うが、月曜午後 8時から放映、斬新な演出がテレビドラマであった当時、NHKとしてはなかなかユニークなドラマだった。3回目くらいかな、「妖虫」では、お固いNHKがセミヌード、と話題になった。女優が誰だか覚えてないが、単に裸の背中が映っただけだった。オフィス街のビルに事務所をかまえる夏木陽介の明智小五郎と小林青年。近所の吉行和子がママを勤めるスナックが明智探偵なじみの店で、出入りする客たちが青年探偵団として事件に絡む、という話もあった。その中にショーケンもいたのである。佐藤蛾次郎、そして米倉斉加年がいたが、実は米倉斉加年は怪人二十面相だったのだ(Wikipediaにも記述あり)。「堀越捜査一課長殿」は怪人二十面相が起こした事件として、最初の方のエピソードにあった。

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「日本探偵小説全集」の乱歩編の内容

ミステリーの古典を揃えた優れた企画「日本探偵小説全集」は今、入手出来るのだろうか? on JBOOK」、手に入ることは入るらしい。講談社の全集で乱歩を再読しだした私なのだが、こういう記事を書いたら、やっぱり「日本探偵小説全集」を取り出して、短編を読み始めた。。新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』の収録作のラインナップについては書いたので、「日本探偵小説全集」乱歩の巻の収録作品も書いておく。

長編 「化人幻戯」
中編「パノラマ島奇談」「陰獣」
短編「二銭銅貨」「心理試験」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「芋虫」「押絵と旅する男」「目羅博士」「堀越捜査一課長殿」

手元に本がなくて、記憶で書いてるので、抜けてるのがあったら後で直す。 『化人幻戯』 は戦後に書かれた本格長編である。解説は中井英夫。

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ミステリーの古典を揃えた優れた企画「日本探偵小説全集」は今、入手出来るのだろうか? on JBOOK

乱歩の短編と「日本探偵小説全集」」、で、その「日本探偵小説全集」、私は全巻買ってるんだが、今、店頭ではどうなのか。

『日本探偵小説全集 11 名作集 1』

JBOOKで検索してみると、この最終配本を含めて、三冊だけ出てくる。この 11巻は 1巻だけ、えらく遅れて刊行されたのだ。何しろ、最初の乱歩が 1984年、それからしばらくは毎月のように出てたのだが、この 11巻が出たのは 1996年 6月。古典の風格だね。私は最後に、この巻の長編『小笛事件』を読み出して、止まってる。後は読んだ。この長編、実話物みたいで、あんまり面白そうじゃないのだ。でも、まあ読みます。e-honで検索すると、在庫有り 8冊、お取り寄せ 4冊なので、手に入ることは入るのだろう。

その、ほとんど読んだ「日本探偵小説全集」、先に書いたように乱歩の巻のラインナップは素晴らしい。他に夢野久作は『ドグラ・マグラ』は現代教養文庫で読んでいたが、「氷の涯」は初めて読んだ。横溝正史は収録されている戦後の作品は大体読んでいた。後、私が、この全集を読んで出会った、この作家がいればあとは要らないという作家が坂口安吾、久生十蘭、ミステリのマニアでない私は日本人では、これらの作家、外国ではポオ、ドイル、ルブラン、チェスタートン、クリスティー、シムノンで十分満足だ。


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乱歩の短編と「日本探偵小説全集」

乱歩『人間豹』を再読」とか、最近、乱歩の話題を書いて、どんどん再読していこうかと思ってるんだけど、短編の話。最初に乱歩を読んだのは、以前書いたように新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』だった。

江戸川乱歩傑作選』 新潮文庫

江戸川乱歩傑作選


今、こんな表紙なんだね。私が読んだときは、やはり黒地に赤で、鎖の絵みたいなのが地味に描いてあったような……。収録作品は「二銭銅貨」「二廃人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」、いづれ劣らぬ名作ぞろい。これ以上の乱歩の名作を、ということになると「パノラマ島奇談」「陰獣」というふうに、中編になってしまうか。その後は長編と同じく春陽堂文庫で大半を読んだ。1972年当時の春陽堂文庫、そこだけ時代が 20年くらい前に戻ったんじゃないかというような感じの本だった。表紙は、まあちょっとサイケというか、抽象アート、みたいな感じなんだけど、活字とか、カバーの全体が白い感じ? 本の最後の方にある文庫の目録が乱歩、あと横溝正史、高木彬光などいくつか、源氏鶏太などのあまり有名でないような作品がズラリ、後、聞いたことないような本が並んでる。そんな春陽堂文庫だけど、現在も健在なんだね。一昨年、『盲獣・十字路』を再び買った(講談社の全集の「盲獣」は一部削除された版のように思われたので、確かめるため)。

人間椅子』 春陽堂文庫

人間椅子

それらしい装丁になってるね。以前は単に「短編全集」という題名で出てたものが、こういうように作品名をタイトルにするように変わっている。

創元推理文庫で日本の作家の作品が出るなんて、1970年代の 10代の頃は思いもしなかったが、1984年、「日本探偵小説全集」という、分厚い、素晴らしい企画がスタートした。その第 1回はもちろん乱歩。この乱歩集の収録作品の選定がまた完璧だった。中編『パノラマ島奇談』『陰獣』、長編『化人幻戯』、短編は「二銭銅貨」「心理試験」あたりはもちろん、あとは「堀越捜査一課長殿」など、初期だけでなく、晩年の作品までから、幅広く収録。「目羅博士の不思議な犯罪」、戦後、乱歩自身がタイトルが長いと「目羅博士」にした、幻想的でもある奇妙な味の秀作も収録。私が読んだ春陽堂文庫は元の「目羅博士の不思議な犯罪」だった。この乱歩らしくないような題名でこそ、この乱歩の作品の中で不思議な位置を占める作品は生きる。「日本探偵小説全集」解説で中井英夫が、この作品の題名は「目羅博士の不思議な犯罪」でなくてはだめだという、まったく同感なのだ。(2007.11.15 文章修正と追記 「日本探偵小説全集」の中井英夫の解説 p.765 題を短くしたことに、〈いまでも私は「いけません。いけません。それはさかさまですよ」と“悲鳴に近い叫び声”をあげたいほどに、この旧い題に愛着を抱いている。〉というくだりが、あまりに我が意を得たりだったせいか、「日本探偵小説全集」には旧い題で収録されているように思い違いをしていたが、確かめたら、「目羅博士」だったので、文章中、そのくだりを修正した。)

分厚いとはいえ、一冊の本に収録するのは限りがある。創元推理文庫では、その後も乱歩の作品を出し続け、主要な作品は創元推理文庫で読めるらしいのが嬉しい。私も短編集を買っていて、ちょっと前に「二廃人」「夢遊病者の死」を読んだ。「人間豹」を読み終えた今、「D坂の殺人事件」を読んでいる。通俗長編の面白おかしさもいいが、やはり短編秀作は味わい深い。

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乱歩『人間豹』を再読

『人間豹』 創元推理文庫

『人間豹』 春陽堂文庫

『黒蜥蜴 江戸川乱歩全集』 9 光文社文庫(『人間豹』収録)

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この記事には、いわゆるネタばらし、ネタばれがある。


『幽霊塔』を再読したわけだけど、講談社の 1978年版全集の 10巻だったかな? 『幽霊塔』収録の巻には『人間豹』が並んで収録されているので、こちらも読んだ。これを機会に乱歩を、どんどん読み直そうかなと思ってる。『幽霊塔』再読の記事で書いたように、『人間豹』は乱歩を読み始めた最初の頃に、春陽堂文庫で読んだ一冊。13歳、中一の冬。望月三起也の『ワイルド7』を、ちょうどこの頃、テレビドラマでやってて、アクション物を午後 7時からの子供番組の枠でやるってどうよ、どうせちゃちいものだろうと思って一度も観なかったが、これをきっかけに近所の散髪屋に行くと置いてある“少年キング”、それまでは赤塚不二夫しか見なかったが、「ワイルド7」も見るようになった。「首にロープ」。で、だんだんはまっていったのだが、単行本で最初から読み始めたのは高二、16の初夏から。2話目が「バイク騎士事件」なのだが、『人間豹』読んでて良かったと思ったね。ネタが分かったから。乱歩の世界と望月アクションの世界というのも、ちょっと感触が違うけど、ああ、ああいう作品もちゃんと読んでるんだなあと思った。

その『人間豹』。乱歩は、日本で最初に本格的なミステリ作品を書いた一人で、特に初期の短編は名作なのだが、その後、大衆向け雑誌に請われて通俗的な長編を次々発表、人気を博し、太平洋戦争前夜の「エロ・グロ・ナンセンス」の時代を代表する一人となった。通俗的な長編からさらに、少年向けの怪人二十面相シリーズに移るわけだが、『人間豹』は少年物を書き始める直前の頃だったと思う。通俗的な長編で人気を博するのはいいが、本人はそんな自分に自己嫌悪を覚えて、休筆を繰り返す。『人間豹』は、二度目の休筆前の作品。その前の「蜘蛛男」とか「吸血鬼」というのは普通の人間の犯罪者だが、「人間豹」は人間と豹の、あいの子ではないかと思わせる描き方をしている。真相は不明で、そのラストが印象深い。また、クライマックスのサーカスの場面ね。最初に読んだとき印象深かった場面は他には中途、明智が人間豹に変装して敵を捕らえようとするのだが、芝浦だったかどこだったか、水道の土管がズラッと並んでるところにルンペンたちが住んでて、そこに紛れ込んでしまって、敵の策略で、人間豹が紛れ込んだと騒がれてしまう。急に変装を解くことも出来ず、ルンペンたちに追われて、あわや、明智探偵の運命やいかにというくだり。

物語の中盤は、敵は単なる獣人かと思ったら、知恵もあって、そういう敵と人間豹たち親子の敵の裏をかくトリック合戦の様相を呈するのがやはり再読しても面白い。前の長編『吸血鬼』の後で明智と結婚した文代さんが敵に狙われ(ちょうど敵のお好みの顔だったという(笑))、窮地になる。小林少年が初めて登場する。

今回再読して、面白いなというか、こういう場面があったかと思ったのは最初のカフェの場面の後、前半の主人公の神谷青年が不気味な人間豹を車で追って郊外の森の中に入っていくんだけど、茂みの中が、さわさわと揺れて、豹の目がこちらを見てるというシーンね。これはスリリング。

明智たちが浅草に敵を追って行くんだけど、結局逃げられて、浅草公園のどこかに人間豹がいるぞというので東京中大騒ぎになって、ある奥さんが公衆便所の戸を開けたら中に人間豹がいて、こっち向いたとかいう噂が流れたり、なんつうか小説中で乱歩の脳内妄想が東京中を覆ってしまった状態になるのが、なんとも快感であるなあと、あらためて感じた。

そこから結末へ向けては、ちょっと急展開というか、なぜか明智と文代さんが、まあ敵を探すという目的はあったんだが、労務者に化けて浅草をうろうろして、結局文代さんはさらわれてしまう。で、明智も捕まって、
そしたら、途中から全然登場しなくなった青年も捕まっていてという……。

神谷青年の最初の恋人であるカフェの女給は捕まって、探しに行った神谷青年も捕まる。神谷青年が壁のすきまからのぞいている前で、人間豹に殺されてしまうのだが、この殺されてしまう場面の描写というのも、今読むと不思議だね。もちろん、そんな殺害の描写を当時の小説でリアルに描くわけにもいかないわけだが、30分も、ほとんど何やってるのか分からないというね。2人目の恋人のレビューの女王は、これは敵の裏をかいて、女中になりすましてお屋敷へ奉公に出ることで行方をくらまそうとしたが……この、実は……って、くだりは恐い。スリル。で、結局殺される。そして文代さんのピンチとなる。一応、人間豹は文代さんを手ごめにしようみたいな行動を取るのだが、もちろんそんな場面を描くわけにはいかないので、文代さんは強い女なので必死に抵抗したら、人間豹はそんなに嫌うのなら殺してやると言って、熊のぬいぐるみの中に入れてしまう。ここも、何やってるのかよく分からないシーン。作中で描かれる人間豹に、とても抵抗は出来そうもないのだが、要するに、人間豹って普通に人間の女とセックスするってことは出来ないんじゃないか。どうしても噛み殺してしまう、でなくても人間に対しては殺すということしか出来ないという。書いてる乱歩としては、あまり女をどうこうするというのに興味ないんじゃないか。なんかエッチなことやりそうなんだが、でもたいしたことないという、今なら少年漫画の世界だね。しかし、そういう面白おかしく読めればいい世界の中で描かれた、荒唐無稽な獣人みたいな犯罪者……というのが、案外、変質的な犯罪者像というのをリアルに描いているのかも知れない。

1978年版全集の『人間豹』のイラストは横尾忠則。私は横尾忠則の乱歩イラストの印象が強かったので、乱歩全集は全部、横尾忠則が描いてるのかと思ったら、そうではなく、古沢岩美、永田力の三人だった。

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星新一の作品の時期

星新一のショートショートを時期別に、第一期、第二期というふうに分けて解説してあるものが、web上にないかなと思って、Google、Yahooで検索してみたが、少なくとも上位の方にはないみたいだね。星新一なら熱心なファン、マニアはいそうなものだが、目立ったページもあまりない。タイトルを五十音別に並べてあるページはあった。

いや、というのは、私は『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』という初期の代表作は 14歳の頃に読んでるのだが(その頃、まだ星新一の作品は、新潮文庫には、この 2冊しか入ってなかった、この二冊を読んだ頃に『気まぐれ指数』が文庫化された)、大半のショートショートの本は 20歳くらいから今までかけて、年代順に読んできてるんだよね。今『どこかの事件』を読んでいるところなのだ。で、読んで行くうちに、自分で勝手に第一期、第二期……というように分けているのだが、それがどの程度、言えてるものなのかどうか確かめたいと思ったのだが。分けた根拠? 読んだ感じで(笑、まあそれに作者の活動状況とかも考慮して)。

こういう風に。
第一期 デビュー時期から 1967『妄想銀行』、1968『盗賊会社』あたりまで。
第二期 1968『『マイ国家』から 1974『夜のかくれんぼ』、1975『ごたごた気流』あたりまで。
第三期 『おのぞみの結末』から

後は現在読書中。

新潮文庫版『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』は早川書房から出た『人造美人』『ようこそ地球さん』に『悪魔のいる天国』から選んだものを収録、後の文庫版『悪魔のいる天国』を加えて、早川書房の『人造美人』『ようこそ地球さん』『悪魔のいる天国』三冊分になる、みたいなものらしい。この『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』は初期の名作である。普通だと 20くらい作品がある中で、これとこれはいい、みたいに選ぶことが出来るのだが、この二冊は、軽い作品も含めてどれも捨て難い。もちろん、作品自体が名作であるということに加えて、本を読んだときの 14歳の私の精神状態とかも作品の印象を強めているだろう。1973年の 12月頃、この作品の書かれた時代は 1950年代後半、私が生まれる直前の頃で、真鍋博のイラストのイメージも含めて、未来を描いた作品が多いのに、近過去、幼時へのノスタルジーを感じさせた。テレビが家庭に入ってきたりして、だんだん宇宙時代になってゆくような幼時だったのである。

この二冊しか新潮文庫に入っていなかったのは幸運だった。何しろ、1000編を越える作品、30年に及ぶ創作活動なのだから、この本はちょっと物足りないというような時期や、あまり初心者向けでないような本もあると思う。わりと気軽に手に取ってみたはいいが、それだけ、という人もいるのだろうね。


『ボッコちゃん』 星新一、新潮文庫

ボッコちゃん


思い出した、筒井康隆のエッセーの中で、星新一の作品の時期を三つくらいに分けたものがあったと思う。第三期にあたるものが『どんぐり民話館』の不思議な世界、というようなことを書いていたようだ。


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ニッポン放送でやった小沢昭一、佐藤オリエらによる乱歩ドラマのこと

乱歩『幽霊塔』を再読」で触れた、「ニッポン放送で小沢昭一、佐藤オリエらによる連続ドラマ」について、もうちょっと書くと、ニッポン放送で 1972年の秋から週日の午後 9時45分、10時からの「日立ミュージック・イン・ハイフォニック」の前の時間に放送された連続ドラマで、大体、一つの作品が 2週間から 3週間続くというのが多かったが、その回だけで終わる短編シリーズがあった。キャストは、小沢昭一、佐藤オリエ、他には小山田宗徳や納谷五郎など、その作品によって、キャストは違っていた。最初の『パノラマ島奇談』は小沢昭一、佐藤オリエで、小沢昭一の語りが面白かったような記憶がある。TBS系で「小沢昭一の小沢昭一的こころ」が始まったのは翌年。スポンサーはオリベッティ・タイプライター。翌年春は松本清張の『ゼロの焦点』を、夏は角川書店から出てた日本の民話シリーズの怪談話の回をやった。秋からは再び乱歩物になったが、今度は小山田宗徳が怪人二十面相として全ての作品で登場するという設定の、かなり、はっちゃけたものとなった。『陰獣』とかでも明智と二十面相が対決した。音楽は夏の怪談と二十面相は寺内タケシとブルージーンズがやってて、怪談のテーマの方に使われてたのは「楢山節考」という曲だった。

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続・乱歩『幽霊塔』を再読

乱歩『幽霊塔』を再読」のつけたし。大正時代初期が舞台だが、あまり時代を感じさせる描写はなかったね。人力車が出てきたか。それと、電話じゃなく電報。その頃はよく列車の事故があったと書かれてた。

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乱歩『幽霊塔』を再読

『緑衣の鬼 江戸川乱歩全集』 11 光文社文庫(『幽霊塔』収録)

『幽霊塔』 創元推理文庫

『幽霊塔』 春陽堂文庫


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この記事には、いわゆるネタばらし、ネタばれがある。

梅雨の終わり頃から秋にかけて、江戸川乱歩の『幽霊塔』を再読した。再読というのは、私は乱歩の作品は、13、14歳頃に新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』から始まって、春陽堂の文庫で 1/3くらい読んだ。『黄金仮面』、『化人幻戯』、『影男』、『十字路』、『盲獣』、『人間豹』、『一寸法師』、『地獄の道化師』といった長編、『陰獣』、『パノラマ島奇談』、『地獄風景』といった中編は、このとき読んだ。短編は大半読んだ。私は乱歩の少年物はいっさい読まなかったので、『江戸川乱歩傑作選』が初めて読んだ江戸川乱歩の本だった。乱歩の作品は絶えず、いろんなメディアに取り上げられているが、このときは、春から夏には NHKのドラマで夏木陽介主演の一風変わった明智シリーズがあり、秋からはニッポン放送で小沢昭一、佐藤オリエらによる連続ドラマがあった。そのドラマが続いている正月明けに読んだのだ。残りは 1978年から刊行された江戸川乱歩全集で読んだ。全巻揃えると、屋根裏の絵になるという、あまり私の趣味に合わない趣向の本の装丁だった。デザインは、その前の講談社の全集が、店頭で見ただけだが、あっさりして良かったように思う。

『幽霊塔』は、乱歩の長編としては変わった部類に入る。乱歩のオリジナルではなく、黒岩涙香の翻案だからだ。乱歩が少年時代、影響を受けたという黒岩涙香の翻案は先に『白髪鬼』がある。黒岩涙香は明治時代に西洋の大衆向け小説の翻訳をやった人だが、その翻訳は現在の翻訳と違い、西洋の人名、地名を漢字にあてて、日本化したという独特のもの。外国名に慣れない当時の読者向けの工夫だったらしい。

中島河太郎の解説によると、『幽霊塔』の原作者は不明なんだそうだ。いつもの乱歩らしくない小説ではあるが、最初の方で、これがあの恐ろしい事件の前触れだったとは……みたいな、思わせぶりな語りを繰り返したりするところ、また、不気味な事件が起こる前触れのような、春の生暖かくて、どんよりと曇った日の描写などは、まさに乱歩である。涙香の方の『幽霊塔』は 1974年頃に NHK FMの「朗読の時間」で聞いたような覚えがある。聞いてても、文語調で、外国人の名前の登場する物語は、大半どうなっているのか分からなかったが、でも無事物語はハッピーエンドで終わったらしいのは分かった。もしかしたら NHK総合の「日曜名作座」でもやったような気もするのだが、記憶があいまいだ。

豪商の宝が隠されているという長崎の田舎の、時計塔のある屋敷と、塔の秘密を解こうとする謎の美女をめぐる物語。まだ本格的探偵小説が生まれてない時代の波瀾万丈のストーリーは、部分部分のスリルとサスペンスを生み出す出来事に力が入れられている。途中で警察の名探偵っぽい人が登場はするが、あまり活躍しない。しかし、解決しそうにない事件は、解決するべくして解決する。見事にハッピーエンドになってしまう。謎の美女が、本当にクールな謎の美女で、一方、主人公が嫌っている、幼い頃からいいなずけにされている親戚の女が、嫌な女で、主人公が本当に心底嫌っているという描写(この小説は一人称の語りだ)が笑ってしまう。怪しいヤツは、いかにも怪しい。

最初に読んだとき、印象に残ってるのは、屋敷の中にいきなり虎が出てくる場面だが、やっぱり、この場面は面白い。首のない死体もだが、列車事故が起こるところなんかも驚くね。蜘蛛屋敷は、半分がた日本家屋だというのが面白い。涙香では神秘な術のようにされていたらしい変身術は、整形手術とは違うとマッドサイエンティスト風な登場人物が語っているが、やっぱり整形手術だろう。超整形手術とでも言うか。クライマックス、時計塔の中に彼女を追って入るシーンは閉所恐怖的な恐さがある。なにせ、内部の最初の部分に入って、12時間動けないのだ(オシッコは?)。思い出したが、ここで激しい雷雨があるなんてのも迫力だった。大正初期が舞台の長編だ。

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