« March 2015 | Main | June 2015 »

感想文:『会話』1,2 ナラボン

2015/05/31 『会話』1,2 ナラボン(講談社、少年マガジンKC 1 2013.11.15, 2 2015.1.16、電子書籍版 eBookJapanよりダウンロード )

“少年マガジン” の兄弟誌である月刊誌 “マガジンSPECIAL” に連載されたギャグマンガ「会話」が単行本 2巻にまとまっている。 2巻というと分量が少ないようだが、毎回多くないページ数の連載で、ちょうど高校 1年から卒業までの 3年間を描き切れているのだ。ヒロインは、ちょっぴりドジな女の子チョコとクールな女の子もなかの二人、最近の流行りのようにギャグマンガといっても美少女を前面に出した、そんなに笑えないマンガ、いやそもそも絵は可愛いのに読む気にもならないマンガだろうか? 「会話」というタイトルもユニークだが、いかにも女の子のたわいない会話のマンガだろうか……まず私にとってはギャグマンガに合った、適度にシンプルならがも可愛い女の子二人に魅かれて読んでみると…1,2話目ではまだわからないけど 3話(覚えてないけど、たぶん連載開始時は 1,2話同時掲載で 2回目が 3話……じゃなかった?)で、さっそくぶっとんだ展開になって、シリーズ全体を一言でいうと、痛快ほら話的展開が随所にある、真正面からギャグやっているマンガであった。もちろん、そういうの私は大好きである。他の雑誌はほとんど知らないけど、“マガジンSPECIAL” ってしっかりギャグマンガを載せてる雑誌だったのだが、このマンガもそうだったのだ。

『会話』 (1)   『会話』 (2)

| | Comments (0) | TrackBack (0)

感想文:『ないしょのつぼみ』7 やぶうち優

2015/05/30 『ないしょのつぼみ』7 やぶうち優(小学館、ちゃおフラワーコミックス 2011.5.3)

最初に、直接この本には関係ないけど、最近年齢のせいか漫画本がなかなか読めなくなって、愛読している女性作家である赤石路代、やぶうち優の本も何冊も積んである。この『ないしょのつぼみ』7は、2年前に最初の方だけ読んで、止まっていた。

そもそもの作風に加えて、掲載雑誌が学年誌であるということも影響してか、淡々とした、この「ないしょのつぼみ」シリーズであるが、この 7は、今までに較べて一層薄いというかシンプルというか……。1年かけて解決されるお話の流れは、ヒロインつぼみが出会った男の子は幽霊?なのだが、魂が体を抜けたときに記憶が失われている。彼の過去を取り戻そうとする、つぼみ、そして交流してゆくうちに、だんだんと淡い想いを抱くようになっている。果たして記憶は取り戻せるのか、つぼみとの関係はどうなるのか……シリーズの今までだと、そのメインのストーリー展開とともに各回いろいろと事件が起こり、その事件のいくつかは「性教育まんが」としての内容に相応しいものであった。今回、「性教育まんが」的なところは、つぼみがはじめての生理を気にして母から整理用ショーツを与えられるところ、走ると乳首がこすれて気になり、ブラジャーを父母(父は産婦人科医である)から与えられるシーン、後はプールで友だちのスタイルを気にするところくらいか、あるにはあるがとても簡単に済ませている。女の子の友だちはいつも通り二人いるが、友達の出番も少ない(夏に起きるちょっとやばい事件もない)。両親の存在感が薄いこのシリーズであるが、いつにも増して薄い(ところで、最初、父は納骨に行ってなかったらしいのだが、仕事?)。

単行本に関しては「性教育まんが」的側面は巻末に収録されている第1期の番外編二編が肩代わりしてると言える。ところでひさびさにその第1期の絵を見ると、同じようでも約 6年経つと変わるものだねえ。

メインのストーリーに関してはクライマックスで十分盛り上がってスマートにエンディングを迎えるので、それは良い(そこで登場する幽霊?昴の母もやっぱり出番少ないねえ)。アストロツインという言葉を覚えておこう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

乱歩再読メモ 『影男』

乱歩が戦後に書いた数少ない長編の一作、『影男』は、私は中学一年の冬、新潮文庫の短編集『江戸川乱歩傑作選』に続いて春陽文庫で『黄金仮面』、『化人幻戯』と読み進め、その次に読んだ長編だった。一緒に買ったのは『十字路・盲獣』、つまり戦後の長編を続けて読んだのだ。まだ乱歩の通俗長編の世界に慣れていない私には新鮮な体験であって、そのせいもあってこの長編はずっと気に入っている作品なのだが、このたび再読しても、やっぱり面白かった。

戦中に西洋のミステリーの動向に新たな興味を抱くとともに戦後、エログロな作風を反省した乱歩は自らの創作よりも探偵小説普及の活動に重きを置いていた。しかし、一部で勘違いされているように戦後の乱歩に見るべき創作がなかったのではなく、しばらくは少年物と短編いくつかを求めに応じて書いていただけだが、1954年、還暦を機に創作に力を入れることを宣言、さっそく『化人幻戯』と『影男』の二長編を連載、完成させたのだった。先に再読感想を書いた『化人幻戯』は乱歩待望の本格長編として評価されたが、一方の『影男』は懐かしい乱歩の通俗長編世界を戦後の東京に展開させたものであった。乱歩の長編評、大内茂男「華麗なユートピア」で、堂々とした本格長編と通俗長編を同時に書き進める乱歩という作家の特異性に感じ入っている。乱歩自身、こちらの『影男』が自分の本来の持ち味だが、戦前より一風気の抜けたものであるという評価を下している。しかし、決してそう捨てたものではないと私は思う。

影男という二十面相のアダルト版とでもいうべきキャラクターを創り上げて展開させる物語はいくつかのエピソードの連なりであるという点で、他の通俗長編とは構成を単純に比較できない。またですかというように繰り返される乱歩の嗜好趣味なのだが、新たな海外ミステリーを読んだ影響か、戦後という新たな時代の空気か、戦前のものとはまた微妙に異なった感触がある。そして繰り返される乱歩趣味は一層近代的に突き詰められて興味深い(そのまま次世代のスパイ映画とかアクション物、テレビ特撮物につながる世界か?)。そういえば影男と殺人請負会社のボスが、意外な場所として遊園地の観覧車や東京湾のボートの上で会ったりとか、そういう場面なんかも新鮮だった。

「アル中の人外」、「人外」という言葉を私はこの小説で初めて知ったのだが、戦地から帰って酒びたりの日々を送る、自らを「アル中の人外」と吐き捨てる父親を持ち、継母からこき使われている、かわいそうないたいけな少女が、巻頭、ホテルでの成金紳士のSM趣味光景に続いて登場する。果たしてこの少女はどうなるのか、このエピソードだけで、もうつかみはOK、軍国主義とともにエログロナンセンスの悪夢を捨て去ったはずの?戦後東京に展開する乱歩の怖ろしくも痛快な夢世界に魅せられてゆくのである。


影男 創元推理文庫版 eBookJapan


| | Comments (0) | TrackBack (0)

乱歩再読メモ 『大金塊』

1978年版講談社江戸川乱歩全集に収録されている少年物は先に記事を書いた『怪人二十面相』、『少年探偵団』、『妖怪博士』が1巻に収録され、次に『大金塊』、『青銅の魔人』、『宇宙怪人』が続く巻に収録されている。そのうち『青銅の魔人』、『宇宙怪人』は戦後になって少年物執筆再開時の作品、戦前の作品は『大金塊』と他に『新宝島』がある。戦後の手塚治虫のデビュー作と同名の『新宝島』は南方の島を舞台にした、当時の国策にも合致したような冒険物であるらしく、戦前に書かれた少年物のミステリ作品は、この『大金塊』が最後である。怪人二十面相が登場しない唯一の少年物長編だという、この長編は当然二十面相の代わりの犯人一味が登場している。この犯人一味、首領や部下たちが二十面相と代わって存分に活躍させられそうな魅力を備えたキャラクターであるにもかかわらず、太平洋戦争開幕前夜でだんだんと探偵小説などが書きづらくなった世相が反映されているのかどうか、それとも乱歩の飽き性によるのか、以前の二十面相物に較べると盛り下がったものになっている。場面は留守を守る少年が盗賊に襲われる発端、それから小林少年が代わりに誘拐されて脱出する前半、暗号文に書かれた島の洞窟探検の二場面のみなのだ。しかも作中でも触れられている『妖怪博士』に続いての洞窟舞台である。でも作品の長さ自体は、以前の長編と変りないのである。

お屋敷に暮らす少年が父の留守に一人番をしている夜に盗賊が入るエピソードはモーリス・ルブランのルパン物第一作である短編集『怪盗紳士』の「ハートの7」のエピソードをそのまま流用している。ベッドで寝ようとしたところ、賊が見張っているぞとのおどしの文を見つけて、見るとカーテンの向こうから賊が見張っているので一晩身動き出来ないというシチュエーションである。乱歩は以前の通俗長編でも、これに基づくトリックを使っているけど、ここではそのまんま借用されている。私は子供時代、最初ホームズ物ばかり読んでいたが、学校図書館にポプラ社の新しいルパン全集(オイルショック以前のこととて、子供向けの本はペーパーバック的な軽装でなくて、しっかりした作りのものが多く、このシリーズも厚い表紙でビニールカヴァーがつき、箱に入っていた)が入ったのに刺激されて、自分で本屋でその全集の『怪盗紳士』を買って読んだ。『怪盗紳士』を選んだのは、これが第一作であることを知ったのと(巻数は 7巻目だったと思う)、短編集で読みやすそうだったからだ。その中で「ハートの7」を読んだときは、もし主人公と同じ目、つまり寝ているときに、動くなと書いた紙を見つけて、隅から賊が狙っていたら自分ならどうするだろうと、真に迫って状況を空想した思い出がある。だから、もしこの『大金塊』でも、このたわいないようなエピソードでも読んでる子供にとっては強烈な印象を与えたことだろうと思う。

続いては、またですか、という感じの人間椅子トリックによって、お屋敷の少年に扮した小林少年が賊にさらわれる。ここで小林少年が明智探偵の作った万能鍵で牢屋を脱するというのは、いささか安易というか今のネット風に言うとチートな感じだが、それでも賊の手中に落ちた小林少年が賊たちの様子をうかがいながら行動を開始し、賊の首領の正体を見る一連の場面は読んでいる子供たちには迫真のスリルではないかと思う。そこで出し抜かれた賊一味が次に何かたくらむのかと思ったら(賊から明智に届いた手紙には最後の手段があると書いてあるのだが、結局賊たちは明智たちの後をつけてきただけとう展開)、もうすぐに明智が小林少年とお屋敷の父子と暗号文の島へ出向くのだ。この暗号に書かれた島がどこかを見つけるのも、知り合いの登山家が暗号文に書かれた動物の名前の岩がある島を知っていたという安易な展開だ。でも、三重県にあるというその、地元の漁師が行きたがらない島に舟を雇って向う場面、巨岩を前にしての見立ての暗号解読、続いての洞窟探検と、読んでる分には先はどうなるのだろうという迫真の展開が続くのだ。前の巻の『妖怪博士』でも思ったが、引いて大人の目で客観的に評価すると、たわいない、『怪人二十面相』、『少年探偵団』に較べて盛り下がった安易な内容であっても、子供の気持ちで読んでる分には十分に迫真のスリルある読み物である、ということもあるのだ。そういう点では、乱歩は押さえるべきところを押さえているのだ。

ところで、高尚な少年愛文献研究に取り組んだ乱歩の描く明智と小林少年の関係というのもふだんから十分に妖しいものが漂っているのだが、この作品は、加えて海水の流入する洞窟を二人っきりで小林少年とお屋敷の少年がやたらと手をつないだりして逃げ惑う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« March 2015 | Main | June 2015 »