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乱歩再読メモ『魔術師』

1978年版講談社全集で『蜘蛛男』と一緒に一冊にまとまっているのが、講談社の雑誌連載で人気を博した『蜘蛛男』の次に書かれた長編『魔術師』だ(同巻には短編名作「芋虫」も収録)。私が 20歳、21歳の頃、未読の作品を講談社全集で読んでいった折の『魔術師』の感想をノートに書き留めていたものが次の文〈一応普通の推理長編仕立てで(あまり犯人中心に描いていない、ある一家を中心に事件が起こる)、見えぬ魔手が次々と迫るスリル、密室殺人の謎……と無残な犯人の手口など前作より、まとまっていて面白かった。中でも犯人の魔術師が死んでもまだ事件が起こるというこの意外な犯人の設定は、少々荒っぽいが、意表を突く。〉

面白いと思ったものの、このたび再読するまで、内容も面白かったということも忘れてましたね。次の『吸血鬼』は、一番面白かったということは覚えてましたが、こちらは忘れてた。今回再読した感想も基本的には、初めて読んだときと同じ。やっぱり、一方で犯人対明智のアクション、サスペンス映画的対決が繰り返しあって、こちらも十分面白いのだが、平行して殺人事件の謎というのがしっかりある。次の『吸血鬼』もそう。その殺人事件というのは、当時世界の探偵小説の流れは、クリスティー、ヴァン・ダイン、そしてクイーンが登場する長編黄金時代で、その長編推理物の面白みというのを、通俗長編の中に最大限表現してみたという印象だ。いくらなんでもそれは無理だろうというトリック、真相も成立する世界だ。そして後は猟奇趣味だが、首を斬られて殺害された一家の人物の一人の、その首が見当たらない。やがて……。ショッキングな場面だが、忘れてんだよね、私は。あんまりこういうの、どうでもいいんだろうな。それから通俗長編だけあって、ご都合主義的に登場人物が出てきて殺される。奇術の舞台で衆人環視でバラバラ殺人という、これぞ乱歩というシチュエーションですが、短編では文学的な美として描かれる題材も、この長編は世界全体が見世物小屋として、その出し物として描かれる。そして確かに、この時期の乱歩は見世物小屋の興行主としても、大いに成功していた。

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