模写:堀北真希 2007 00
2007年カレンダーの表紙。約 1年遅れ。

こういうのを、筆のすさびと言います。
乱歩の再読を話題にしたが、再読といえば、最近、ある本屋に入ったが特に買いたいものもないので、あまり厚くない新潮文庫の森鴎外『ヰタ・セクスアリス』を買った。26、7の頃、読んだ本の再読である。再読なのだが、読んだ内容を全然覚えていない。ただ印象に残ったのは、明治時代というと、幕末から明治初期の文明開化の頃、また明治末期の日露戦争の頃、夏目漱石が小説を書き始めた後の頃の、いろいろと歴史上の有名な事件や著名な人物が印象に強かったのだが、鴎外の自伝的な要素もある、この小説、時代は幕末から明治前半なのだが、派手な事件などまったく無縁で、仕えている殿様が殿様でなくなってはいるのだが、やはり江戸時代とあまり変わらないように仕えている家族やその子供たちの学生としての生活があるのだなと、それまで意識しなかった社会の空白のようなものに触れた感覚があった。
買ってきて読み始めたが、冒頭、夏目漱石が『我輩は猫である』を書き始めたことに触れていて、さっそく「我輩も猫である」とか「我輩は犬である」というのがいろいろと出てきて、いやになったと書いてあるのに笑った。
今、鴎外がオナニーしたところまで読んだ。「オナニー」とは言ってないがね。「自慰」とも「自涜」とも、つまり具体的な名称は上げてないのだが、西欧でその頃、すでに最近の性教育の原型みたいな主張があって、それを取り上げて、自分が書くとしたら、どのようなものになるか、息子が読んでもいいような内容のものということで書き始めた、この文章、書かずばなるまいと書いているのだが、結果は、そういう行為があると聞いてやってみたが、頭痛がして気分が悪くなるだけだった、こういうことは自発的にやるのでなくてはだめなのだろうと書いてある。それだけかよ! ……まあ、あるんだろうね。誰もがサルのようにオナってるってわけでもないのだ。オナニーしても夢精は経験ないという人もいるし、その逆に近いような人もいるのだろう。性的な事柄については個人差も大きいということですな。そういう淡泊な少年もラブコメマンガなんか読んで胸はときめかいしたりもするかも知れぬが、鴎外は貸本で為永春水とかの人情本を読んで、こういうのは醜男の自分には無縁な世界らしいと感じてたらしい。
その前のくだり、今の中学生あたりの歳になって寄宿制の学校に入ると、美少年でもないのに上級生に狙われたらしい。軟派と硬派、硬派というの、はつっぱって喧嘩ばかりするグループのことだろうと思いきや、ここで言う硬派は美少年を狙う連中のことだった。九州出身者は硬派が多かったという。乱歩の少年愛というのは、プラトニックなものを志向したようだが、ここでの硬派は露骨である。
「ブルー・オイスター・カルト『オカルト宣言』 on JBOOK」で書いた CD 6曲目「ハーベスター・オブ・アイズ」と 7曲目「地獄の炎」(「フレーミング・テレパス」)の曲の切れ目ね、CBSソニーの紙ジャケ版、買ってみましたがね、結局、以前買った輸入盤と同じ。つまり、私は LPで聞いて 6曲目が終わり、7曲目のイントロで、赤ん坊をあやすようなオルゴールの子守歌みたいなメロディ(有名な曲だが名前を知らない)が流れ、一転ヘヴィな曲に入る。つまり、この子守歌から 7曲目だと思っていた。根拠はかつてラジオで何度も、この 7曲目をシングルカットしたものを聞いたから。曲の構成としても、イントロで雰囲気違う曲とか音を入れて、一転して曲に入るというパターンはよくある。ところが CDは この子守歌が終わる寸前、ドラムが入るところから 7曲目ということにしている。こっちが正しいんだろうか? どうも不自然だと思うのだが。まあ、いずれにしろ、このアルバムは通して聴くことが多いから、気にならないと言えば気にならない。ベスト盤も持ってて、それにも当然収録されてるんだけど(曲名が原題そのままの「フレーミング・テレパス」に変えられている)、アルバムでは子守歌部分のラストがフェードアウトするところとバンドの音が入るところが重なってるのに対し、ベスト盤は子守歌部分は、完全に消していて、いきなり曲に入る。どちらにしろ、ネットでこの問題を話題にしてるのは、私くらいしかいないようだ。今度の紙ジャケ版は、ラストに何曲か入っているボーナストラックが、ヒット曲「ワイルドで行こう」をヘヴィメタってやってるのも含めて、いい感じだ。
「特撮ヒロインのドラマ 第二次怪獣ブーム、変身ブームの時代 その 1 DVD on JBOOK」の続きなんだけど、その前にさ、「その後は……ムフフフ、エッチな『ルパン三世』にチャンネルを……。」と書いたけど、考えてみれば、当時、小学6年生で、「ムフフフ」なんて喜んでる余裕はなかった。大人っぽいアニメで、いかしてるなーって言うのか、どう言うんだろうね、とにかく新しい体験ではあったが、変に色っぽいのはむしろ困ったというか……なにしろ当時はテレビなんて、大体茶の間に1台あるだけで、家族の目があるわけで。この『ルパン三世』やってた頃の日曜は午後 6時から『好き!好き!!魔女先生』で、6時30分からは『ふしぎなメルモ』と、それでなくても微妙にエッチっぽい作品が続いて、ダメ押しで『ルパン三世』。
で、この時期というと、『仮面ライダー』は確かに流行った。先に書いたように私はライダー系はまったく見てないんだけどさ。テレビのネットが UHFの局は出来てて、そこでやってるんだけど、電波が良く入らなくてね。まあ、仮りに見られても、もう中学に入る頃に変身、ライダーキック、ショッカーで喜んじゃいられねえやってのがあるが、でも、これも書いたように、走り幅飛びで「ライダーキックだ」とか言って面白がってたわけですがね、男の子というものは。『仮面ライダー』はヒットしただけあって、1971年の春から 73年の初め頃までやったんだ。
『仮面ライダー』 VOL.1 東映ビデオ販売株式会社
DVDは 16巻とかまで出てる。例の『スーパーヒロイン画報』とかで見ると、緑川ルリ子役の真樹千恵子は、ヒロインらしいヒロインという感じで、藤岡弘とのツーショットが似合う。ライダーガールというのは何(笑)。ボンドガールに習ったのか? 山本リンダは変身で再人気が出る前からやってたのか、やってる最中に歌がヒットしたのか、歌がヒットしてからの出演なのか? ちなみに、 山本リンダは、困っちゃうなの頃から知ってるけど、この時期は、よくテレビで歌ってるのを見たなあ。マリ役。ユリが沖わか子、ミチが中島かずみ、他に野原ひろみ、島田陽子の名前もあるんだな……。
『ライダー』が大人気の 1972年春(この頃流行ってたものとして「ライダー」とともに思い浮かぶのは「ピンポンパン体操」だな)、ウルトラシリーズは『ウルトラマンA』に。色気づいてきた当時の私のこと、男女が合体、と聞いて喜んでおったが、それほど話題にもならず、それどころか北斗と合体する南隊員は途中で降板、彼女が降板する際のドラマ上での設定が、実は月の女神だったというのはなんなんだよって感じだ(月星人で、仲間のいる冥王星に行った)。
DVD『ウルトラマンA』 Vol.1 ビクターエンタテインメント株式会社
南夕子(星光子)は合体は結構なんだが、色気がなあ、確かに美人ではあるんだろうけど、少年の私にアピールするものがなかった。もう一人の女性隊員の美川のり子隊員(西恵子)も地味でさ。TACだよな、部隊の名前は。記憶にあることというと、隊長が隠密同心だったという(笑)。『大江戸捜査網』は東京12チャンネルの番組だけど、日曜の午後にやってて、よく見てたのだ(『明智小五郎』も、その時間にやったのだ)。『大江戸捜査網』も、またちょっとユニークな番組という印象がある。それまでの時代劇ドラマと違うというか。テーマは景気のいいシンフォニーだし、クライマックスで見栄を切るし(これが東映の特撮ドラマに引き継がれたのか?)、梶芽衣子はエッチっぽいくのいちみたいだし。で、全体としては全然新しいって感じがしないし(笑)。まあしかし、結構見てたし、『ウルトラマンA』も結構見てた。
変身ブームの 1972年春、『ルパン三世』の後番組が『超人バロム・1』だ。これは『ルパン三世』を見てただけあって、わりと見てるのよな。南野陽子も見てたらしい(笑)。『ウルトラマンA』は男女の合体だけど、こっちは男の子二人の合体、全然面白くもないという(笑)。さいとうプロ作品。ゾルゲ魔人というのが敵で、マッハロッドという車でぶっとばせという暴走族みたいな主題歌とか思い出すと笑える。
『超人バロム・1』 VOL.1 東映ビデオ販売株式会社
しっかり DVDが出てる。驚きなのは、アニメで最近リメイクされてんだよ。ヒロインは普通の女の子、主人公の一人の姉に木戸紀子(戸島和美)、この人は翌年、原和美と改名して巨大ヒーロー物の『流星人間ゾーン』で、ゾーンエンジェルという脇役をやった。もう一人の主人公のお母さん役、白鳥静に上田みゆき、声優としておなじみの人。主人公二人の同級生?役、須崎久美江に斉藤浩子。
「乱歩の短編と「日本探偵小説全集」」、で、その「日本探偵小説全集」、私は全巻買ってるんだが、今、店頭ではどうなのか。
JBOOKで検索してみると、この最終配本を含めて、三冊だけ出てくる。この 11巻は 1巻だけ、えらく遅れて刊行されたのだ。何しろ、最初の乱歩が 1984年、それからしばらくは毎月のように出てたのだが、この 11巻が出たのは 1996年 6月。古典の風格だね。私は最後に、この巻の長編『小笛事件』を読み出して、止まってる。後は読んだ。この長編、実話物みたいで、あんまり面白そうじゃないのだ。でも、まあ読みます。e-honで検索すると、在庫有り 8冊、お取り寄せ 4冊なので、手に入ることは入るのだろう。
その、ほとんど読んだ「日本探偵小説全集」、先に書いたように乱歩の巻のラインナップは素晴らしい。他に夢野久作は『ドグラ・マグラ』は現代教養文庫で読んでいたが、「氷の涯」は初めて読んだ。横溝正史は収録されている戦後の作品は大体読んでいた。後、私が、この全集を読んで出会った、この作家がいればあとは要らないという作家が坂口安吾、久生十蘭、ミステリのマニアでない私は日本人では、これらの作家、外国ではポオ、ドイル、ルブラン、チェスタートン、クリスティー、シムノンで十分満足だ。
乱歩『人間豹』を再読」とか、最近、乱歩の話題を書いて、どんどん再読していこうかと思ってるんだけど、短編の話。最初に乱歩を読んだのは、以前書いたように新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』だった。
『江戸川乱歩傑作選』 新潮文庫
今、こんな表紙なんだね。私が読んだときは、やはり黒地に赤で、鎖の絵みたいなのが地味に描いてあったような……。収録作品は「二銭銅貨」「二廃人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」、いづれ劣らぬ名作ぞろい。これ以上の乱歩の名作を、ということになると「パノラマ島奇談」「陰獣」というふうに、中編になってしまうか。その後は長編と同じく春陽堂文庫で大半を読んだ。1972年当時の春陽堂文庫、そこだけ時代が 20年くらい前に戻ったんじゃないかというような感じの本だった。表紙は、まあちょっとサイケというか、抽象アート、みたいな感じなんだけど、活字とか、カバーの全体が白い感じ? 本の最後の方にある文庫の目録が乱歩、あと横溝正史、高木彬光などいくつか、源氏鶏太などのあまり有名でないような作品がズラリ、後、聞いたことないような本が並んでる。そんな春陽堂文庫だけど、現在も健在なんだね。一昨年、『盲獣・十字路』を再び買った(講談社の全集の「盲獣」は一部削除された版のように思われたので、確かめるため)。
『人間椅子』 春陽堂文庫
それらしい装丁になってるね。以前は単に「短編全集」という題名で出てたものが、こういうように作品名をタイトルにするように変わっている。
創元推理文庫で日本の作家の作品が出るなんて、1970年代の 10代の頃は思いもしなかったが、1984年、「日本探偵小説全集」という、分厚い、素晴らしい企画がスタートした。その第 1回はもちろん乱歩。この乱歩集の収録作品の選定がまた完璧だった。中編『パノラマ島奇談』『陰獣』、長編『化人幻戯』、短編は「二銭銅貨」「心理試験」あたりはもちろん、あとは「堀越捜査一課長殿」など、初期だけでなく、晩年の作品までから、幅広く収録。「目羅博士の不思議な犯罪」、戦後、乱歩自身がタイトルが長いと「目羅博士」にした、幻想的でもある奇妙な味の秀作も収録。私が読んだ春陽堂文庫は元の「目羅博士の不思議な犯罪」だった。この乱歩らしくないような題名でこそ、この乱歩の作品の中で不思議な位置を占める作品は生きる。「日本探偵小説全集」解説で中井英夫が、この作品の題名は「目羅博士の不思議な犯罪」でなくてはだめだという、まったく同感なのだ。(2007.11.15 文章修正と追記 「日本探偵小説全集」の中井英夫の解説 p.765 題を短くしたことに、〈いまでも私は「いけません。いけません。それはさかさまですよ」と“悲鳴に近い叫び声”をあげたいほどに、この旧い題に愛着を抱いている。〉というくだりが、あまりに我が意を得たりだったせいか、「日本探偵小説全集」には旧い題で収録されているように思い違いをしていたが、確かめたら、「目羅博士」だったので、文章中、そのくだりを修正した。)
分厚いとはいえ、一冊の本に収録するのは限りがある。創元推理文庫では、その後も乱歩の作品を出し続け、主要な作品は創元推理文庫で読めるらしいのが嬉しい。私も短編集を買っていて、ちょっと前に「二廃人」「夢遊病者の死」を読んだ。「人間豹」を読み終えた今、「D坂の殺人事件」を読んでいる。通俗長編の面白おかしさもいいが、やはり短編秀作は味わい深い。
どっかで見たニュース、いかにもブログのネタにしてくれ、みたいな。「asahi.com」だったか。「正解はCMのあと」は逆効果 視聴者86%「不愉快」( 2007年11月06日13時48分 )http://www.asahi.com/culture/update/1106/TKY200711060131.html
今さらっつうか。私ゃもう長い間、ほとんどテレビ見てないけど(土日に、NHK教育とかテレビ東京系とかちょっとつけるくらい)これに限らず、どんどん不愉快な演出が増えてきてる。でも、支持されてるから増えるんだろう。この調査結果みたいなのは、どうせネットでちょっとやったアンケートとかじゃねえのかと思ったが、記事を見ると「慶大通信教育部、文学部の727人を対象に」だぜ。だから、なんだ、私が、これはと思うようなものを、面白れえ、面白れえ、アハハ、アハと、大勢見てるんだよ、と私は思ってる。もちろん、そんなこと実際は、ちゃんと調べてみないと分からない。
『人間豹』 創元推理文庫
『人間豹』 春陽堂文庫
『黒蜥蜴 江戸川乱歩全集』 9 光文社文庫(『人間豹』収録)
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この記事には、いわゆるネタばらし、ネタばれがある。
『幽霊塔』を再読したわけだけど、講談社の 1978年版全集の 10巻だったかな? 『幽霊塔』収録の巻には『人間豹』が並んで収録されているので、こちらも読んだ。これを機会に乱歩を、どんどん読み直そうかなと思ってる。『幽霊塔』再読の記事で書いたように、『人間豹』は乱歩を読み始めた最初の頃に、春陽堂文庫で読んだ一冊。13歳、中一の冬。望月三起也の『ワイルド7』を、ちょうどこの頃、テレビドラマでやってて、アクション物を午後 7時からの子供番組の枠でやるってどうよ、どうせちゃちいものだろうと思って一度も観なかったが、これをきっかけに近所の散髪屋に行くと置いてある“少年キング”、それまでは赤塚不二夫しか見なかったが、「ワイルド7」も見るようになった。「首にロープ」。で、だんだんはまっていったのだが、単行本で最初から読み始めたのは高二、16の初夏から。2話目が「バイク騎士事件」なのだが、『人間豹』読んでて良かったと思ったね。ネタが分かったから。乱歩の世界と望月アクションの世界というのも、ちょっと感触が違うけど、ああ、ああいう作品もちゃんと読んでるんだなあと思った。
その『人間豹』。乱歩は、日本で最初に本格的なミステリ作品を書いた一人で、特に初期の短編は名作なのだが、その後、大衆向け雑誌に請われて通俗的な長編を次々発表、人気を博し、太平洋戦争前夜の「エロ・グロ・ナンセンス」の時代を代表する一人となった。通俗的な長編からさらに、少年向けの怪人二十面相シリーズに移るわけだが、『人間豹』は少年物を書き始める直前の頃だったと思う。通俗的な長編で人気を博するのはいいが、本人はそんな自分に自己嫌悪を覚えて、休筆を繰り返す。『人間豹』は、二度目の休筆前の作品。その前の「蜘蛛男」とか「吸血鬼」というのは普通の人間の犯罪者だが、「人間豹」は人間と豹の、あいの子ではないかと思わせる描き方をしている。真相は不明で、そのラストが印象深い。また、クライマックスのサーカスの場面ね。最初に読んだとき印象深かった場面は他には中途、明智が人間豹に変装して敵を捕らえようとするのだが、芝浦だったかどこだったか、水道の土管がズラッと並んでるところにルンペンたちが住んでて、そこに紛れ込んでしまって、敵の策略で、人間豹が紛れ込んだと騒がれてしまう。急に変装を解くことも出来ず、ルンペンたちに追われて、あわや、明智探偵の運命やいかにというくだり。
物語の中盤は、敵は単なる獣人かと思ったら、知恵もあって、そういう敵と人間豹たち親子の敵の裏をかくトリック合戦の様相を呈するのがやはり再読しても面白い。前の長編『吸血鬼』の後で明智と結婚した文代さんが敵に狙われ(ちょうど敵のお好みの顔だったという(笑))、窮地になる。小林少年が初めて登場する。
今回再読して、面白いなというか、こういう場面があったかと思ったのは最初のカフェの場面の後、前半の主人公の神谷青年が不気味な人間豹を車で追って郊外の森の中に入っていくんだけど、茂みの中が、さわさわと揺れて、豹の目がこちらを見てるというシーンね。これはスリリング。
明智たちが浅草に敵を追って行くんだけど、結局逃げられて、浅草公園のどこかに人間豹がいるぞというので東京中大騒ぎになって、ある奥さんが公衆便所の戸を開けたら中に人間豹がいて、こっち向いたとかいう噂が流れたり、なんつうか小説中で乱歩の脳内妄想が東京中を覆ってしまった状態になるのが、なんとも快感であるなあと、あらためて感じた。
そこから結末へ向けては、ちょっと急展開というか、なぜか明智と文代さんが、まあ敵を探すという目的はあったんだが、労務者に化けて浅草をうろうろして、結局文代さんはさらわれてしまう。で、明智も捕まって、
そしたら、途中から全然登場しなくなった青年も捕まっていてという……。
神谷青年の最初の恋人であるカフェの女給は捕まって、探しに行った神谷青年も捕まる。神谷青年が壁のすきまからのぞいている前で、人間豹に殺されてしまうのだが、この殺されてしまう場面の描写というのも、今読むと不思議だね。もちろん、そんな殺害の描写を当時の小説でリアルに描くわけにもいかないわけだが、30分も、ほとんど何やってるのか分からないというね。2人目の恋人のレビューの女王は、これは敵の裏をかいて、女中になりすましてお屋敷へ奉公に出ることで行方をくらまそうとしたが……この、実は……って、くだりは恐い。スリル。で、結局殺される。そして文代さんのピンチとなる。一応、人間豹は文代さんを手ごめにしようみたいな行動を取るのだが、もちろんそんな場面を描くわけにはいかないので、文代さんは強い女なので必死に抵抗したら、人間豹はそんなに嫌うのなら殺してやると言って、熊のぬいぐるみの中に入れてしまう。ここも、何やってるのかよく分からないシーン。作中で描かれる人間豹に、とても抵抗は出来そうもないのだが、要するに、人間豹って普通に人間の女とセックスするってことは出来ないんじゃないか。どうしても噛み殺してしまう、でなくても人間に対しては殺すということしか出来ないという。書いてる乱歩としては、あまり女をどうこうするというのに興味ないんじゃないか。なんかエッチなことやりそうなんだが、でもたいしたことないという、今なら少年漫画の世界だね。しかし、そういう面白おかしく読めればいい世界の中で描かれた、荒唐無稽な獣人みたいな犯罪者……というのが、案外、変質的な犯罪者像というのをリアルに描いているのかも知れない。
1978年版全集の『人間豹』のイラストは横尾忠則。私は横尾忠則の乱歩イラストの印象が強かったので、乱歩全集は全部、横尾忠則が描いてるのかと思ったら、そうではなく、古沢岩美、永田力の三人だった。
「特撮ヒロインのドラマ 『ウルトラマン』の時代 DVD on JBOOK」の続きを書こうとは思っていたんだけど、やっぱり、私にとっては、幼稚園から小学校低学年の『ウルトラマン』の時代が一番思い出深いわけで、後はまあ、あー、やっとるなーって感じで、いつまでも怪獣物なんか見てられるかよって感じで、仮面ライダーが、地元で UHFの局でネットされてたのだが、映りが悪いこともあって、まともに見たことがないんだよなあ。まあ体育の時間に走り高跳びで真正面から飛んでるヤツを「ライダーキックだ」とか、中学生の男子連中でも言ってたけどね。そういうわけで、この時代となると、だいぶ、ヒロインとかに疎くなってるので、例の『スーパーヒロイン画報』 に載ってないヒロインはよく分からなかったりするけど。
で、その第二次怪獣ブームのはしりとなったのが、これ、『宇宙猿人ゴリ』、番組名が途中で変わって『スペクトルマン』。
ボックスセットで出てる。全63話収録つうから、これでいいんだろうね。これは宇宙猿人ゴリが指令する真似なんか、クラスの男の子がしてたけどね、私はやっぱりテレビの映りが悪くて、あとこれは『巨人の星』の裏番組だったわけね。その頃は『巨人の星』も後半で、もうそんなに熱心に見てもなかったと思うが、でもチャンネルは『巨人の星』だった。
本格的に第二次怪獣ブームとなっていくのは、1971年の春、TBS系で『帰ってきたウルトラマン』が放映開始されてから。だけど、同じ頃に『仮面ライダー』が放映開始、怪獣ブームというより変身ブームになった。
『DVD帰ってきたウルトラマンコレクターズBOX【初回限定生産】』
これは、ウルトラマンがまた登場ってこともあって、金曜午後 7時、他に見たい番組もないので見てましたが、さすがにもう小学 6年生だし、番組自体、第一次の怪獣ドラマと違って、どうもドラマも面白くないし、科学特捜隊に相当する MATも地味で、丘隊員(丘ユリ子、桂木美加)なんて名前も覚えてなかったな。むしろ、坂田アキ役の榊原るみなのだが、こちらもそう常時メインで登場するってわけでもなし、可愛い子ちゃんタレントとして人気はあったが、大人気というほどでもなく。前の年に東京12チャンネル系でやった、今ならとても放映出来ないドラマ「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」役で黄金仮面になって何度も登場した団次郎が主役ってのは、ちょっと面白かったけど。この人、当時は資生堂の男性化粧品のコマーシャルに出たりして、俳優というより人気モデルだったのだ。それから坂田アキとともに主人公を見守る、その兄が岸田森というのもポイント高かった。岸田森は『怪奇大作戦』で好きだったからね。でも、この二人、途中で都合で怪獣に殺されちゃうんだよなあ。榊原るみが他のドラマに出るのでスケジュールが合わなかったかららしいんだけど、ひでえ話(笑)。私なんかより、少し歳下の、切通理作とかいうような人は、この時期の人間ドラマがお気に入りらしいけど。そういう人は 1970年代の刑事ドラマなんかも好きなんだよね。私は刑事ドラマも「非常のライセンス」とか除いて、全然面白いと思わなかった。正義感の強い若い刑事が取調室で、容疑者の胸ぐらとらえて「どーして白状しないんだあ」と叫ぶようなヤツね、ああいうのキライ。好きなのは千葉ちゃんと丹波ボスの『キイハンター』みたいなの。
ウルトラシリーズと別の円谷プロの新たな特撮怪獣シリーズ『ミラーマン』も登場。これはプロトタイプのマンガが結構前から小学館の学習雑誌で展開されてた。これも観てないんだよ。フジテレビでは日曜午後 7時からだったが、地元では火曜 7時からで、その時間は……そう、『なんたって18歳』岡崎友紀だ。
『ミラーマン the complete DVD-BOX Ⅰ』
『ミラーマン the complete DVD-BOX Ⅱ』
『ミラーマン』のボックスセットは二つに分かれてるんだな。ヒロインは博士の娘、御手洗朝子(沢井孝子)。放映は 1971年 12月からで、日曜 7時ということは、TBS系では秋から『シルバー仮面』をやってた。これは見てた。そう面白いとも思わなかったけど。『シルバー仮面』は当初、等身大ヒーローで、柴俊夫、彼の兄弟姉妹たちが旅をするんだよね。そう面白いとも思わなかったけど納得して観てたんで、途中からテコ入れで巨大ヒーロー物になって、なんだって感じがした。ドラマで記憶に残ってるのは、最初の方で、後の ZAT隊長の東野英心が出た回があって、姉妹たちの誰かと恋仲みたいになって、宇宙人に襲われたとき、姉妹たちの光線銃を持って、撃てと言われたんだけど安全装置のはずし方が分からず、撃てなくて殺されてしまうというシーンが記憶に残ってますな。姉妹の春日ひとみが夏純子で春日はるかが松尾ジーナ、兄弟には篠田三郎もいるし、Wikipedia見ながら書いてますけど(笑)、さすが、日曜 7時だけあるラインナップにはなってますな。松尾ジーナは当時、ハーフタレントとして、ちょっと売り出されてた人、CM出たり、恋するジーナはなんとかかんとかって歌を出したりもしてた。んで、7時からはそれまでの習慣みたいに TBS系で『シルバー仮面』を観て、その後は……ムフフフ、エッチな『ルパン三世』にチャンネルを……。
星新一のショートショートを時期別に、第一期、第二期というふうに分けて解説してあるものが、web上にないかなと思って、Google、Yahooで検索してみたが、少なくとも上位の方にはないみたいだね。星新一なら熱心なファン、マニアはいそうなものだが、目立ったページもあまりない。タイトルを五十音別に並べてあるページはあった。
いや、というのは、私は『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』という初期の代表作は 14歳の頃に読んでるのだが(その頃、まだ星新一の作品は、新潮文庫には、この 2冊しか入ってなかった、この二冊を読んだ頃に『気まぐれ指数』が文庫化された)、大半のショートショートの本は 20歳くらいから今までかけて、年代順に読んできてるんだよね。今『どこかの事件』を読んでいるところなのだ。で、読んで行くうちに、自分で勝手に第一期、第二期……というように分けているのだが、それがどの程度、言えてるものなのかどうか確かめたいと思ったのだが。分けた根拠? 読んだ感じで(笑、まあそれに作者の活動状況とかも考慮して)。
こういう風に。
第一期 デビュー時期から 1967『妄想銀行』、1968『盗賊会社』あたりまで。
第二期 1968『『マイ国家』から 1974『夜のかくれんぼ』、1975『ごたごた気流』あたりまで。
第三期 『おのぞみの結末』から
後は現在読書中。
新潮文庫版『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』は早川書房から出た『人造美人』『ようこそ地球さん』に『悪魔のいる天国』から選んだものを収録、後の文庫版『悪魔のいる天国』を加えて、早川書房の『人造美人』『ようこそ地球さん』『悪魔のいる天国』三冊分になる、みたいなものらしい。この『ボッコちゃん』、『ようこそ地球さん』は初期の名作である。普通だと 20くらい作品がある中で、これとこれはいい、みたいに選ぶことが出来るのだが、この二冊は、軽い作品も含めてどれも捨て難い。もちろん、作品自体が名作であるということに加えて、本を読んだときの 14歳の私の精神状態とかも作品の印象を強めているだろう。1973年の 12月頃、この作品の書かれた時代は 1950年代後半、私が生まれる直前の頃で、真鍋博のイラストのイメージも含めて、未来を描いた作品が多いのに、近過去、幼時へのノスタルジーを感じさせた。テレビが家庭に入ってきたりして、だんだん宇宙時代になってゆくような幼時だったのである。
この二冊しか新潮文庫に入っていなかったのは幸運だった。何しろ、1000編を越える作品、30年に及ぶ創作活動なのだから、この本はちょっと物足りないというような時期や、あまり初心者向けでないような本もあると思う。わりと気軽に手に取ってみたはいいが、それだけ、という人もいるのだろうね。
『ボッコちゃん』 星新一、新潮文庫
思い出した、筒井康隆のエッセーの中で、星新一の作品の時期を三つくらいに分けたものがあったと思う。第三期にあたるものが『どんぐり民話館』の不思議な世界、というようなことを書いていたようだ。
図書館に行って、雑誌のコーナーを見たら、朝日新聞社の“論座”という、ふだん手に取ったりしないというか、“朝日新聞”を購読してなかった家で育った私にとっては、“世界”や“諸君”は若い頃から知ってるけど、そんな雑誌あったの?って感が強い雑誌の表紙を見たら、井上陽水のインタヴィユーが載ってたので読んだ。表紙だけパッと見ると鈴木謙介と、もう一人名前を知らない演劇関係か何かの人が陽水のインタヴィユーやってるように見えたが、別の記事だった。
そういや、「“Rolling Stone”日本版「日本のロック名盤100」は、どんなもんだろうね」のあれを見たときも、『氷の世界』あたりあってもいいのにと思ったが、まあエンケンとユーミンが載ってるのでいいか、みたいな。
“論座”のインタヴィユーの人が、過去のインタヴィユーで陽水があー言ってるこー言ってると言うのんで、陽水が、芸能人である自分に、そんな首尾一貫した発言を求められても困る、みたいなことを言ってるのが可笑しかった。陽水が芸能人であるってのはしごく当然なんだけど、1970年代中頃の、陽水ブームの頃は、既成の芸能界の歌謡曲対フォーク、ロックって図式があったから、その頃を知ってる人の中には、フォーク、ロックの歌手とか深夜放送ラジオの DJとかって、僕等の兄貴(笑)、代弁者、仲間ってイメージがまずあって、芸能人っていう認識があまりなかった人も結構いるのではないか。
私自身はというと、その陽水ブームのときに、富澤一誠が、あまり有名でない、なんとかブックスから『俺の井上陽水』という、東大中退して音楽評論家やってるナウな俺自慢のかたわら陽水について、あれこれ書いた本を読んだ。その中にファースト・アルバムの『断絶』の中の「白い船」という曲を、スポーツ新聞で自作を語る、みたいな趣旨で陽水が書いた文章があって、それが、歌謡曲の伝統的な、お涙頂戴の受ける曲に、いかにして仕上げたかみたいなことを諧謔的に書いていたのを取り上げて、、陽水の芸能人志向というか、歌謡曲の歌手みたいな存在でありたいみたいなことを指摘していた。それを読んで、その部分だけは、なんというか、ちょっと教えられた、みたいなところはある。その本は手元にないので漠然とした話、細部は事実誤認があるかもしれないが。
(2007.11.5 文章修正 「スポーツ新聞の自作を語るみたいなコーナーで陽水が語った文章があって、」 → 「 スポーツ新聞で自作を語る、みたいな趣旨で陽水が書いた文章があって、」、「諧謔的に書いていて、」 → 「諧謔的に書いていたのを取り上げて、」 )
(2007.11.5 文章追加 どの程度、指摘していたのか相当記憶があいまいだが、少なくとも「芸能人としての陽水」というと、私は真っ先にその本のその部分を思い出す。若い人なんかは、芸能人でないというより、一種の文化人みたいな認識もあるのか?)
(2007.11.5 「エンケンなんかも〜分かるね。」以下削除、文章追加 そう見当外れのことは書いてないつもりだが、文章の勢いで適当なことを書くのは自重する。この文章だけ残す(笑)。「ただ、みんな仲間だ、手をつなごうみたいなことばっか言ってるうちに情けないニューミュージックばかりになって、しっかり金だけはファンからしぼりとってるってありかたとは違うなあ、みたいなことは分かるね。」)
『氷の世界』 井上陽水
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あと、“論座”の記事では小熊英二という人が新左翼の歴史の一面を語っていた記事は、ちょっとなるほどと思った。1960年代後半の学園紛争の時代、男性連中が大局的なことをめぐって討論会とかやってるときに女子が当然のようにお茶くみ係だったり、デモのときは、おにぎり部隊だったりという、これは何かで読んだことあるが、そういう既存の保守的な集団とあまり変わりがなかったというね。んで、1970年安保が通って、大局的な連中やっぱりダメじゃんっていう挫折感の中で、ウーマンリブが出てきたり、水俣病の支援とかいろいろな団体を支援したりするっていう運動になってきて、1980年代に西欧の「緑の党」的なありかた、大局的なことをあれこれ言うんじゃなくて、まず身の回りの問題を解決しようっていう行動、でも、それだと大きく政治を動かすというところまでは行かない、って感じの解説だ。
1970年代の暴力的な作品主体のエロ劇画、当時の雰囲気を知ってる私らからすると当然みたいなのだが、美少女マンガしか知らない若い人から見ると、絵柄を別にしても疑問に思えるらしい。上記の解説を参考にすると、なるほど、当時のノリはつまりその1960年代後半の学園紛争の時代のノリで(劇画全共闘などと呼ばれた)、既成の体制にべったりの正義の味方への反発、(革命的な?)暴力肯定みたいなものがあって性の開放とかも叫ばれたが、男女関係に対する意識は、お茶くみ、おにぎり部隊のエロ・ヴァージョンってわけだな。